メルセデス・ベンツの東京にインスパイアされたコンセプトカー
いよいよ開幕した第44回 東京モーターショーに、メルセデス・ベンツがワールドプレミアとなるコンセプトカーを持ち込んでくれた。しかも、その名はなんと“Vision Tokyo”である。
世界屈指のメガシティである東京にインスパイアされたこの“Vision Tokyo”は、見ての通りワンボックススタイルを採る。スペース効率に優れたこのフォルムは、改めて言うまでもなく日本のクルマの定番。これを、いかにメルセデス特有のラグジュアリーさと融合させるかに苦心したと、デザインをまとめたダイムラー社 メルセデス・ベンツ アドバンスド・デザイン シニアマネージャーのホルガー・フッツェンラウブ(Holger Hutzenlaub)氏は言う。ちなみに氏は、今年のデトロイト・モーターショーで発表された「F015 Luxury in Motion」、フランクフルトの「Concept IAA」なども手掛けている。
“Vision Tokyo”がターゲットとする1995年以降生まれの“ジェネレーションZ”世代はクルマを居間のように感じ、使っている。ラウンジのように仕立てられた“Vision Tokyo”のインテリアは、まさにそうしたコンセプトに拠るもので、当然ながら自動運転システムは標準装備。但し、望んだ時には自らステアリングを握ることも可能だ。尚、この室内に入るためのドアは左側にだけ用意される。これは左側通行の日本に合わせたものだ。
幼い頃からデジタルガジェットやインターネットに親しんで育った“ジェネレーションZ”世代にとってクルマは単に移動手段であるだけではなく、動くデジタルツールでもなくてはならない。“Vision Tokyo”のフロントグリルとリアウインドウ内にはLEDが内蔵されており、これを車内の音楽に合わせてイコライザーのように点灯させたり、あるいは近づく歩行者に対して自動運転中の車両が気付いていることをアピールしたりと、コミュニケーションの手段として活用している。また、ディープラーニング、知能を持った予測エンジンの採用で、よく行く店はどこかなど、乗員の嗜好を覚えて進化する仕掛けも。
この世代、必ずしも運転には興味は……というわけで、自動運転機能は当然備わる。パワートレインは燃料電池ハイブリッド。バッテリーで約190km、燃料電池で790kmの計980kmを走行できる。
未来の東京で、このカタチがどれだけラグジュアリーを表現しきれるのだろう? あるいは、こういうアニメ調だけが日本じゃないよ……と、最初はちょっと首を傾げてしまったのだが、フッツェンラウブ氏自身、「これはあくまで“ガイジン”の目で見た東京のイメージですけどね」と言っていたから、これは敢えてという部分も大きいのだろう。更に言えば氏は、かつて日本に住み、メルセデス・ベンツ アドバンスド デザイン・センター・ジャパンのゼネラルマネージャーも務めていた人物。ある意味、日本人の我々以上に日本が、日本の若者が、日本の都市が的確に見えているのかも?
東京モーターショーに行かれる方は、是非チェックして、未来の東京に思いを馳せてみてほしい。