テスラ モデルXが発表
9月30日、いよいよ登場したテスラ モデルX。発表イベントのインターネット中継開始が遅れに遅れるという小さなハプニングはあったものの、充実したプロダクトの内容、そしてイーロン・マスクCEOの巧みなプレゼンテーションは、それを吹き飛ばしてあまりある、大きなインパクトを持つものだった。
外観は、これまで公開されてきたプロトタイプと大きく異なるところはないが、ディテールが洗練されたせいか、非常にまとまりよく、スタイリッシュに見える。Cd値0.24というSUVトップクラスの空力性能、開放感たっぷりの大型フロントウインドウも注目のポイントだが、やはり何より目をひくのは、そのリアドアだろう。
“ファルコンウイング”と名付けられたこのドアは、ヒンジドアより開閉に必要な空間が圧倒的に小さくて済み、スライドドアより開口部が大きく取れるのが美点。実際、デモンストレーションでは両脇30cmの隙間でも開閉できることがアピールされた。もちろん開閉は自動で、センサーにより周囲との接触が回避される。
スーパーカーではなくSUVへの、こうしたドアの採用は初めて。2列目、3列目シートからの乗り降りは楽になるし、2列目にチャイルドシートを装着していた場合など、子どもを抱き上げるのが非常にラクになるに違いない。但し、クルマの上側にはそれなりのスペースが無いと開閉できないので、屋内ガレージの場合は気を遣う必要があるかもしれない。
室内には3列シートが備わる。3列目は未使用時には完全に折り畳める。2列目は2人掛け、3人掛けのレイアウトができ、乗車人数に応じて多くのスペースを確保したり、あるいは長尺物の搭載を可能にしたりとフレキシブルに使える。ちなみに3人分のシートは同サイズなので中央席でも快適に過ごせるはずだ。
尚、モデルSの空調システムはHEPAフィルター内蔵。思わず目を見張るのは内気循環、外気導入のほかに「バイオウェポン ディフェンス」モードが用意されていること。このような状況下でも車室内をクリーンに保ち、乗員を守るという。物騒だが、イーロン・マスクCEOは、こうした装備にも十分、現実味があると今のアメリカ、あるいは世界を見ているのだろう……。
荷室も広大である。リアに自転車も難無く積み込めるスペースがあるだけには留まらず、エンジンがないEVらしくフロントフードの下にもゴルフバッグを2セット、楽々飲み込む。容量は数値で表されてはいないが、いくつものスーツケース、旅行鞄、ベビーカーまで取り出した発表会の映像を見る限りは、想像をはるかに上回ってくれそうである。
更に、牽引キャパシティも2268kgという余裕のある数字を実現。もっと沢山の物を運びたい、あるいはキャンピングトレーラーを牽引したいというニーズにも応える。当然、牽引重量により航続距離は変化するが、モデルXが搭載するトリッププランナーは、それに応じてどれだけの充電が必要かの計算が可能だという。
ドライブコンポーネンツは基本的にモデルSのデュアルモーター仕様と共通で、つまりすべてAWDとなる。「90D」は前後に最高出力193kWの電気モーターを搭載し、0-100km/h加速は5.0秒をマーク。ハイパフォーマンス版の「P90D」は、リアの電気モーターを375kWに増強し、0-100km/hは4.0秒に短縮される。更に「Ludicrous」アップグレードを行なえば、0-100km/hは3.8秒という驚異的な速さを獲得できる。航続可能距離は「90D」で470km、「P90D」で450kmと発表されている。
前方カメラとレーダー、全方位センサーの搭載により、標準装備の高速域でも作動する緊急自動ブレーキシステムのほか、今後は自動運転機能もワイヤレスアップデートにて充実が図られていく予定となっている。この辺りはモデルSと同様である。
このモデルX、アメリカにて納車が始まった特別仕様車、ファウンダーシリーズに続いてシグネチャーモデルが登場する予定となっている。こちらの予約は、すでに1000台に達したという。日本でも当然、ウェブサイトから予約受付中だが、、納車は2016年後半以降になる。また価格は未定である。