フェラーリ初のPHEV「SF90ストラダーレ」を発表! Part.2
Part.1はこちら
フェラーリ初のPHEVとしてデビューしたSF90ストラダーレ。V型8気筒ツインターボエンジンと3基の電気モーターの組み合わせにより最高出力1000cvを実現したトップパフォーマンスモデルである。
PHEVシステムにおけるリチウムイオンバッテリーの容量は現時点では不明だが、220cvという高出力を賄うだけにそれなりのサイズとなるのは想像に難くない。ちなみに3基の電気モーター合計で最高出力122psとなるNSXのそれは実は1.1kWhでしかないが、電気モーター出力が単純に倍近く、しかもPHEVとして25kmのEV走行を可能とするとなれば、7 〜8kWh辺りは積んでくるだろうか。乱暴な計算だが1kWh辺りざっと10kgとして、100kg弱くらいにはなるだろう。
このバッテリー、電気モーター、PCU(パワーコントロールユニット)、オンボードチャージャーなどPHEV化のための各種コンポーネンツの搭載による車重への影響が心配されるが、公表値によれば乾燥重量は1570kgと、488GTBの200kg増となる。日本の車検証に記載されるのは、おそらくその100kg+増とすれば、1700kgを少々下回る辺りか。ちなみにNSXは1780kgである。
軽量化の実現のためボディは新設計とされ、マルチマテリアル化が徹底されている。CFRP製バルクヘッドの採用、7000シリーズ合金の広範囲の使用により剛性を向上。また、空力開発も徹底されており、250km/hで390kgという市販車としては異例の強大なダウンフォースを発生させると同時に、内燃エンジン車以上にシビアとも言えるシステムの冷却にも大いに配慮されている。
スタイリングも特徴的だ。360モデナで確立したミッドシップのプロポーションから遂に離れ、キャブフォワード化と前後オーバーハングの短縮により、更にマッシヴなフォルムが形作られている。もちろん、それはPHEVコンポーネンツを収めるという事情もあったのだろうが、そのフォルムは斬新さに繋がっていると言っていい。
コクピットには16インチの世界初となる湾曲したスクリーンを採用。必要な情報が整理されて表示されるが、デフォルトでは中央に回転計が描き出される。また新たにヘッドアップディスプレイも採用された。そしてステアリングホイールには触感フィードバック付きのタッチスイッチが備わり、様々な操作を両手を離すことなく完結させることができる。
スペックも、メカニズムも、デザインも、魅力的なSF90ストラダーレだが、デイリーユースの実用性には懸念もある。フロントフード内が電気モーターで占拠されたことからラゲッジスペースが小さく、スペックシートには74ℓ+リアシェルフ20ℓという数字が記されるのみなのだ。488GTBではフロントに230ℓが確保されていたことを思うと、だいぶ小さい。フェラーリとして初めて、標準仕様車のほかASSET FIORANOと呼ばれるトラックエディションを最初から用意しているが、それだけに標準仕様車にはそれなりの実用性を期待したいが……いや、限定モデルではなくラインナップの頂点に君臨する存在として、3,910万の812スーパーファストを大きく上回る値付けが予想される1台だけに、そういうことはあまり考慮しなくてもいいのかもしれない。
重箱の隅をつつくような話をしてしまったが、それもこれもSF90ストラダーレが、こうして写真を眺めスペックを見やるだけでも、とんでもなく魅力的なクルマだからに他ならない。今はただ実際にステアリングを握ることができる日が来るのを、楽しみに待ちたいと思う。話は、それからである。
島下泰久