世界初の水素自動車MIRAIに乗る Vol.1

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MIRAIが遂に走り出した。昨年11月18日に発表されたトヨタの量産型燃料電池自動車(FCV)であるMIRAIには、これまでテストコースなどでは試乗の機会があった。それが、いよいよ走り慣れた一般公道でそのステアリングを握ることができたのだ。
それにしても一体どの話から始めればいいのだろう。クルマ自体のことはもちろん燃料電池というものについて、あるいは水素インフラ、維持費含めた価格、行政の対応等々、MIRAIにまつわる話題はいくつも思い浮かぶ。
悩ましいところだが、まずはクルマ自体の概要から説明していくことにしよう。もちろん、それだけでも見所は盛り沢山である。
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まず燃料電池とは、水素を酸素と化学反応させることで電気を発生させる、言わば発電機のことを指す。つまり、車載の高圧水素タンクに充填された水素を、酸素と化学反応させて発電し、その電気でモーターを駆動して走行するというのが、燃料電池自動車のあらましとなる。
発電の際に排出するのは水だけということから究極のクリーンカーとして期待され、90年代より世界中の自動車メーカーがこぞって開発を進めてきた燃料電池自動車だが、各社ともなかなか実際に販売にこぎつけるまでには至らなかった。MIRAIは、いよいよその重い扉を開いたのである。
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MIRAIは全長4870mmと、同じトヨタで言えばカムリとほぼ同等の大きさのセダンボディを持つ。発電を行なう燃料電池の心臓部、燃料電池スタックは前席の下に置かれ、高圧水素タンクは後席下、そして後席背面の低いところに搭載される。背が高いのはそれらのせい。おかげでデザインは非常に苦労したという。
実際、最初に見た時にはギョッとさせられたのも事実だが、見慣れてきたせいもあって、今は中々悪くない気がしている。きちんとセダンというフォーマットを守りながらも「新しい!」、「MIRAIだ!」というメッセージがハッキリ打ち出されているのがイイ。
世間の注目度も高い。試乗中、高速道路では、並走しながら前後に移動して写真を撮っている人も居たし、街中で小学生たちに「あ、MIRAIだ!」と指を指された時には、その浸透度に本当に驚かされてしまった。
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インテリアの造形も凝っている。写真だとやや煩雑にも思えるかもしれないが、運転席に座ってみるとそうでもなく、むしろ仕立ての上質さに感心させられることになる。内装はウォームホワイトが標準で、ツートーンのブルーホワイト、ブルーブラックは選択肢として設定されている。この明るい内装色を敢えて標準設定とできたのも、クオリティの高さがあってこそだ。
尚、室内は4人乗り。後席は大型センターアームレストによって左右席が区切られている。この辺りは官公庁での利用を含め、後席の使用頻度が高くなるという前提に立ってのものだろう。実際、足元や頭上の空間は十分に確保されているから、大柄な男性でも窮屈さは感じないはずである。
そんな具合で見た目だけでもインパクトは大きなMIRAIだが、一番の驚きは、何よりその走りだ。燃料電池自動車云々の前に、1台のクルマとして実に気持ちのいい走行感覚を堪能させてくれるのは、ある意味で嬉しい誤算であった。
Vol.2に続く
写真:サステナ編集部