アウディ初の量産EV「e-tron」市販版が登場
アウディ初の市販EVとなるアウディe-tronが、アメリカはサンフランシスコで開催されたワールドプレミアイベント「The Charge」にて遂に発表された。ベルギー ブリュッセルの工場ではすでに昨月より生産が始まっており、すでに1万台の予約を集めたヨーロッパではすぐに販売が開始される。ここにサステナ主筆の島下泰久が臨席したので報告したい。
長らくプラグインハイブリッド車などにサブネームとして使われてきた名前をそのままズバリ車名としたe-tronは、全長4901mmのSUV。効率性とダイナミズムの両立を目指したというデザインは空気抵抗の低減を強く意識して低く、後方で絞り込まれたキャビンを持つ一方で、オリジナルクアトロのイメージである力強いフェンダーを備える。
アイコンであるシングルフレームグリルは踏襲され、フォルムもショートノーズなどにはなっていない。デザイン上、e-tronを特徴づけるのは前後のライトの端にある縞状のシグネチャー。スマートフォンの充電状況の表示のようなこれが、エレクトリックのイメージを表しているという。
鏡の代わりにカメラを用いて、車両後方の状況を映像で表示するヴァーチャルミラーも採用された。これは優れた視認性、そしてウインドノイズの低減を実現する。室内側のディスプレイも、ドアパネルにきれいに収められているのは、さすが。デザイン初期から、これが前提とされていたからこそだ。但し、このミラーはアメリカ、中国ではまだ認可されておらず、これらの国では当面、通常のドアミラーが装備される。
電気モーターはレアアースを使わない非同期式で、前後に2基が搭載される。特徴的なのは通常時にフロントが125kW、リアが140kW、Sレンジ+キックダウンのブーストモードでは同135kW、165kWと、リアの方がパワフルなこと。これは意外にも通常時は力強い加速などドライビングダイナミクスを重視してリア駆動として、必要な時だけフロントにも駆動力を配分する。減速時にはフロントで積極的に回生を行なうというファンクションのためだ。
興味深いのは電気モーター、パワーエレクトロニクスの冷却が非常に入念に行なわれていることである。公表された0-100km/h加速データは、先行したメルセデス・ベンツEQCにはやや及ばないが、開発陣は「e-tronはまったくパフォーマンスを落とすことなく、何度でも同じ加速を繰り返すことができます」と胸を張る。それは、この優れた冷却システムによるところが大きい。
厳重なフレームに囲まれ、更にモジュールのひとつひとつが隔壁で離されるかたちでフロアに敷き詰められたリチウムイオンバッテリーは、容量95kWh。航続距離は400kmを超えるという。充電時間は150kWの急速充電なら30分で80%に。日本ではCHAdeMO対応となる予定だ。こちらも冷却に配慮することで、実充電時間を非常に短くすることができているという。
もちろん、このアウディe-tronは日本にも導入される。来年の中盤から後半には発売開始となる模様。ディーラーへの急速充電設備の設置も進められていくことになるということだ。
島下泰久