「燃料電池自動車にも変わらず力を入れていく」 ダイムラー社 ツェッチェCEOインタビュー
東京モーターショーにて、燃料電池自動車のGLC F-CELLのアジアプレミアを行なうメルセデス・ベンツ。ご存知の通りディーゼル含む内燃エンジンにも、EQブランドでの電気自動車にも力を注いでいる同ブランドの、将来に向けたパワートレインのロードマップについて、ダイムラー社 取締役会会長 兼 メルセデス・ベンツ・カーズ統括のディーター・ツェッチェ博士に話を聞くことができたので、このタイミングで紹介しておきたい。
「私たちダイムラー社は、エミッションフリーのモビリティの実現を将来に向けた大きな目標として掲げています。それには電動パワートレインが大きな役割を果たしますが、現時点では数多くの解決しなければいけない問題を抱えています。BEV(バッテリーEV)では、使用する電気がどのように作られたのかも重要になります。また充電インフラの充実、バッテリー生産時のCO2削減やリサイクルなど、課題はまだまだ非常に多いのです。そのためダイムラーでは、この分野に今後数年間で1千億ユーロの投資をしていくと決めました。」
「ディーゼルを含む内燃エンジンにも引き続き力を入れていきます。ヨーロッパのCO2削減の目標はディーゼルエンジン無しでは達成することは不可能です。またNOxについても私たちはこれまで大幅な削減を実現してきたということを忘れて欲しくないと思います。すでに昨年には、すでに新型ディーゼルエンジンも投入しました。そして今後30億ユーロの投資も予定しています。」
「そして燃料電池です。現状ではBEVが優位に立っているのは間違いありません。ですが、まだラストコールという状況ではありません。たとえば、容易に再生可能な水素の製造が可能になるなど、周辺の状況に大きな変化があれば、状況は一変するはずです。また、水素の燃料としての優れた可搬性もポイントと言えます。」
「何年までに、何を禁止するなどと一時的な感情的に決めるのは賢明ではありません。これまで私たちがそうしてきたように、技術革新こそ、あらゆる問題を解決するカギになるでしょう。私たちダイムラーは、これからも全方位にパワートレインの開発を続けていきます。」
世はまさにEV狂想曲といった状況だが、メルセデス・ベンツは時流に迎合するのではなく、受け止めつつも冷静に、将来に向けてのビジョンを描いている。自動車を生み出したブランドのプライドが、ツェッチェ氏の言葉からはにじみ出ていたのだった。
島下泰久