トヨタとマツダの電撃提携、その果実は?

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5月13日夜、緊急記者会見にてトヨタとマツダが業務提携に向けて基本合意したことが明らかにされた。大まかな内容については、両社からの発表、ストリーミング中継された会見、そして各種報道などにて明らかにされている通り。プレスリリースの文言をそのまま引用すれば『「クルマが持つ魅力をさらに高めていく」ことを念頭に、両社の経営資源の活用や、商品・技術の補完など、相互にシナジー効果を発揮しうる、継続性のある協力関係の構築に向けた覚書に調印した』という。
言い方を変えれば現時点では、まだ具体的な内容については決まっていないということである。会見場での質疑応答、その後の囲み取材には異例に多くの時間が割かれたのだが、ここでも明確な答は引き出せなかった。事前にはトヨタが燃料電池を、マツダが内燃エンジン技術をそれぞれ融通し合うといった報道もあったが、そうした発表は一切為されなかった。さて、では一体トヨタとマツダは、この業務提携で何をしていくつもりなのだろうか?
まずキーワードとなるのが『従来の枠組みを超えた提携関係』という言葉だ。筆者が質問したのは、トヨタにとって既存のスバルあるいはBMWとの提携とは何が違うのか、特に燃料電池などの分野に於いて既存のパートナーシップにマツダも乗ってくる可能性もあるのかということ。それに対してトヨタの豊田章男社長は、こう回答した。
『燃料電池に限らず何に限らず、かつては(提携は)個別のプロジェクトごとに話をさせていただいておりました。今後エネルギー問題をはじめ、中長期問題としてやっていかないといけない部分について、将来のモビリティ社会の構築のため刺激をし合える仲間という意味で、(従来の提携よりも)一歩近づいた関係が今回生まれたと思っています』
どこか分野を限定して技術の融通をし合うといったプロジェクト単位の関係ではなく、より包括的に、それこそ「いいクルマづくり」とは何かという部分から関与し合う間柄になっていく。今回は、その第一歩だといったところだろうか。
ちなみに噂されているマツダの内燃エンジンがトヨタ車に積まれるのでは、という話の実現性は低いと筆者は見る。ガソリンエンジンについてはトヨタも目下、急速な進化の過程にあるし、ディーゼルエンジンはすでに欧州でBMWから供給を受けている。主市場も、車両の生産も欧州だけに、日本製エンジンを積む意味は小さい。
状況から考えればやはりトヨタの燃料電池技術が、将来マツダ車にも搭載されるという可能性こそ非常に高いのではないだろうか。これには、お互いにメリットしかないからだ。但し、水素ロータリーが陽の目を見なくなって、悲しむファンは居るかもしれないけれど…(?)