公道走行可能な“F1”「メルセデス-AMG プロジェクト1」がデビュー
フランクフルトモーターショーの開催前夜、メルセデス-ベンツは恒例の“メルセデス-ベンツ&スマート メディアナイト”を開催した。そしてこの場にて、F1テクノロジーをそのままロードカーに転用したハイパーカー、メルセデス-AMG プロジェクト1がいよいよデビューを飾ったのである。
ディーター・ツェッチェCEOと、メルセデス-AMGのF1パイロットであるルイス・ハミルトンの手で紹介されたプロジェクト1のパワートレインはF1マシンが使っている1.6ℓV6ターボ・ハイブリッド。何と市販車にして、バルブスプリングの代わりにニューマチックバルブが使われ、レヴリミットは1万1000rpm以上にも達する。また、ターボチャージャーもF1マシンで躍進のキモとなった、排気側と吸気側がエンジンの前後で分かれ、長いシャフトで連結される構造を採り、ここには最高出力90kWの電気モーターが接続される。つまりこれは電動ターボチャージャー。排気熱から転換した電力によって駆動される。
また、クランクシャフトには120kWの電気モーターも接続。そして左右前輪にも、減速エネルギーの実に40%を回生できるという、それぞれ120kWの電気モーターが積まれる。つまり車両全体で、4つの電気モーターが備わるのである。
システム最高出力は、実に1000ps以上で、ギアボックスは8速。電気モーターだけで25kmを走行できる一方で、0-200km/h加速は6秒以内、そして最高速は350km/h以上にも達する。
シャシーはF1と同様のカーボンファイバーモノコックで、サスペンションはプッシュロッド式。あらゆる意味で、リアルなF1スペックとされているのだ。
このプロジェクト1、限定台数275台が予約だけであっという間に売り切れてしまっているという。内容を聞けば、それも納得だ。1000psものパワー、超高回転型のエンジンフィーリング、ホンダNSXと同様に左右前輪をそれぞれ1基ずつの電気モーターで駆動してトルクベクタリングを可能にする駆動システムなど、興味は尽きないが、ステアリングを握ることができるチャンスは限りなく皆無と言って良さそうなのが残念。ともあれ、過去これだけF1マシンに近いスペックを実現したロードカーはなかったということは確かである。
島下泰久