運転支援も充実! ボルボXC90 T8 Twin Engine AWD試乗 Part.2
ボルボXC90 T8 Twin Engine AWD INSCRIPTIONには多彩な走行モードが用意されており、センターコンソール上のスイッチから任意で選択が可能だ。通常時に使うのは「Hybrid」モード。その他に、車速が125km/h以下に制限され、可能な限りエンジンを始動させずに走行する「Pure」、内燃エンジンと電気モーターのパワーをフルに使う「Power」、トラクション重視の「AWD」に、電子制御式LSD効果まで発揮する「Off Road」を選択できる。街中ではピュアEVとして、しかしいざとなれば高い走破性を発揮するSUVとしてなど、様々な顔が1台のクルマに凝縮されているのだ。
フットワークに関して言えば、このT8 Twin Engine AWD INSCRIPTIONには標準装備となるエアサスペンションは、路面からの当たりがマイルドで、ドイツ車のビシッとした感覚とは違った、穏やかな印象をもたらす。一方、大容量バッテリーなどによって増加した車重のせいもあるのか、最初に乗った時には、路面の継ぎ目を通過する時などにはドスッと強い入力があるのが気になっていたのだが、先日ステアリングを握った、走行2万kmに達しようかという個体では、乗り味がだいぶこなれてきていたのが確認できた。もともと優れた直進性、すっきりとした操舵感といった美点は認識していたが、こうなると長距離クルーザーとして、ますます魅力的と映った次第だ。
運転支援システムの充実ぶりも注目すべきところと言える。特に、車線を逸脱しそうになると確実に進路を引き戻すLKA(レーン・キーピング・エイド)の働きは印象的。正直に言えば、はじめはちょっと引き戻し力が強過ぎるとも感じたのだが、疲れてくると、万が一の際には必ず介入してくれるという安心感、信頼感に繋がっていると思えてきた。
尚、最新モデルでは最新のV90/S90などと同じように車線維持支援機能であるパイロット・アシストの設定速度が130km/hまで引き上げられており、更には前走車が居ない状況でも使用可能になっている。実際、東名高速道路ぐらいの曲率の連続であれば、制御が途切れることはほとんど無い。手放しで運転し続けることができるわけではないが、クルマとドライバーとの協調で、よりリラックスして高速巡航することができる嬉しい装備だ。
ちなみに首都高ぐらいの曲率になると、さすがに車線を見失いがちになる。それ自体はまあいいのだが、その時にステアリング反力が強くなり過ぎて、行きたい方向に行くのを拒む傾向があるのは気になった。ドライバーがオーバーライドした時には、もう少しそれを尊重してほしい。
前述の通り、駆動用リチウムイオンバッテリーをセンタートンネル内に配置することで、XC90 T8 Twin Engine AWDは、荷室を犠牲とせず、また3列シート7人乗りを可能にしたままでプラグインハイブリッドを成立させている。滑らかで力強い走り、上々の乗り心地、最先端の運転支援装備に、忘れてはいけないクリーン且つ存在感たっぷりのスタイリング、インテリアの素晴らしい雰囲気なども兼ね備えていることを考えれば、冒頭に記した通り、人気にも納得である。
更に言えば、いかにも「いい人」に見えそうなボルボというブランドと、プラグインハイブリッドは、とてもマッチングが良いとは言えないだろうか? 筆者自身も、こんなクルマがウチに1台あったら…と、すっかり気に入ってしまったのだった。
Part.1はこちら
島下泰久