オートパイロットが劇的に進化…テスラのソフトウェアアップデート Part.2

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 昨年秋、テスラは自動運転機能、そしてユーザーインターフェイスを改善した、モデルS発売以来、最大級のアップデートである、ソフトウェア アップデート8.0を発表した。ここでは、この最新仕様がインストールされた車両と、2015年3月のアップデートであるソフトウェア6.2を搭載した車両を比較しつつ、その進化を確認した。
 まず、すぐに気付くのがユーザーインターフェイスの改善だ。画面上部のコントロールバーは普段は隠され、必要なときだけ画面のタッチで呼び出すかたちに変更。大画面を更に効果的に使えるようになった。目的地検索は、タップひとつで起動する音声コマンドでも可能に。自宅などホームアドレスにはスワイプだけで案内が開始される。メディアプレイヤーなども使いやすさが増して、全体によりスマートフォンライクな使い勝手を実現したと言っていい。
 キャビンオーバーヒートプロテクションも注目である。クルマがオフの状態でも、車内を安全な温度に保つことで、子どもやペットなどが車内に放置された場合に備えるのだ。もちろん、放置するのはもってのほか。あってはならないことである。しかし、この機能のおかげで子どもやペットが助かるなら、反対するべきことでもないだろうと思う。
 そして一番の目玉が自動運転機能であるオートパイロットの進化だ。まず走行アルゴリズムの前に、インストゥルメンツパネル上の表示が刷新されて、より直感的に現在の状況を確認できるようになったのが大きい。自動運転機能では、現在クルマが何を検知して、どう走ろうとしているのかを知れることが、安心して使うためにはとても重要。アップデートされた表示は、それに応えるものと言える。
 自車周辺の車両はグラフィック表示され、これによってドライバーはちゃんと検知しているんだという安心感を得ることができる。検知している車線についても同様。また、オートステアリングが作動状態であることを示すインジケーターも、更に見やすくなった。
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 そして何かと話題を呼んだオートパイロットは、大幅な機能向上が図られた。そもそもこの機能、ステアリング操作をかなりの範囲で自動で行なうとは言え、完全にクルマ任せでいいものではなく、人間がステアリングを握っていることが、この機能の大前提。しかしながら手放しで走行する動画が多数公開されたように、ドライバーを信じた設計の逆手を取るユーザーが出てきてしまった。
 それを受けてソフトウェア8.0からは、使用条件がより厳格化されている。まずステアリングが操舵されていないことを感知すると、ステアリングを握るようグラフィックで警告。それでも操舵が行なわれない時にはメーター画面全体が白くフラッシュを始める。続いては警告表示が行なわれ、オートパイロットはキャンセルされる。
 それだけじゃない。一旦、キャンセルされた後は、一旦車両を停止させ、Pレンジを選択しない限りは、再度オンにすることはできないのである。そうなれば、わざわざ手放しでずっと走ろうという人は居ないだろう。有効な策がとられてと言えるのではないだろうか。
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 オートステアリング機能そのものも、動作精度が大幅に向上している。かなりの精度で車線をキープし、しかも格段にスムーズに走行してくれるようになったのだ。尚、この機能は一般道でもオンにできるが、テスラ車は道路標識を認識して、制限速度プラス10km以上の設定はできないようになっているようである。
 話を制御のスムーズさに戻すと、今回は、ソフトウェア6.2の車両と比較して走らせたので、その差はまさに歴然だった。実際、直前の車両だけでなくその前の車両まで認識して、その動きを検知。急ブレーキなどが必要な際に、より素早くリアクションできるようになったり、車線の際を走行している車両を追い越す際には、車線内で進路を補正して、少し距離を置いたりといった制御も入れられている。たった1年半で、こんなに進化するなんて! と驚かされるばかりだ。
 テスラ車のオートパイロット/オートステアリングは、ステアリングホイールをしっかりと保持し、制限速度付近で流れに乗って走行していれば、ステアリング操作をかなりの部分でアシストして、安全な走行を可能にしてくれるようになった、と言うことができる。しかも、これをソフトウェアのアップデートで実現しているのだから唸らされる。
 しかも、クルマのハードウェア自体も、やはり同様に進化しているのだ。最新型は明らかに乗り味がしっとり、スムーズになっていること、更には各部の作りがよくなっているのを、その場で乗り較べて、しかと実感できたのである。
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 ハードウェアの話で言えば、このソフトウェア アップデート8.0の発表から間もない2016年10月に、オートパイロットの進化版たるエンハンスドオートパイロットが発表され、発売予定のモデル3を含む全車に、その土台となるハードウェアIIと呼ばれる新システムを採用するとアナウンスされた。カメラが最大で8基、超音波センサー12基、ミリ波レーダーなどをセットしたこのシステムは、従来のものとはまったくの別物。将来的にレベル5、つまり完全自動運転にも対応するとされる。
 実は1月にアメリカはフリーモントにあるテスラの工場を訪れた際には、すでにこの最新版のモデルSがスタンバイしていた。こちらについても取材が出来次第、改めて報告したい。
島下泰久