宅配の、更に近い未来? メルセデス・ベンツ「Vans & Robots」

 CESでEV商用車とドローンを組み合わせた近未来の宅配車両のプロポーザルである「Vision Van(ヴィジョン・バン)」を発表したメルセデス・ベンツは、実はその前日にラスベガス近郊で、より早期の実現が可能と考えられる、もうひとつの新しい宅配のあり方を提案した。「Vans & Robots(バン&ロボット)」は、商用車スプリンターを“母船”に、電動自動走行ロボットによって配送先へ荷物を届ける、そんな宅配のかたちを目指したプロジェクトである。
 年間10-15%の勢いで成長している、いわゆるe-コマースの目下の課題はラストマイル、つまり配送先に届ける最終段階では商用車やバイク、あるいは日本の場合は自転車や台車などが使われている。この「Vans & Robots」は、そこを電動自動走行ロボットに置き換えるもの。荷物にはすべてICタグが付けられており、送り先のユーザーがスマートフォンから配達時間を指定すると、配送業者の事業所で、その荷物がバンに載せられ、ハブになる場所へと運ばれる。この荷物の搭載も、電動自動走行ロボットは自律走行で行なうから、配送員の手間は少なくなる。
ファイル 2017-02-01 18 54 19
 ある程度の範囲の配送のハブとなる場所にバンを停めたら、ドライバーがタブレットを操作。電動自動走行ロボットが、いよいよ配送に出掛ける。ロボットは半径2マイルの範囲内で正確な時間に配送を行ない、終わると自動的に母船となるバンへと帰還する。送り先のユーザーも、スマートフォンのアプリを使って荷物が今、どこにあるかをリアルタイムで確認することが可能だ。
 電動自動走行ロボットは3Dマップを活用して、最高6km/hの速度で自律走行を行ないつつ、常に母船であるバン、そして他のロボットと交信。2.5cmの精度でトラッキングされ、搭載されたカメラからの映像も送られる。
 もしもいたずらしようとする人が居たら? ロボットに触れると大音量のサイレンで警告が行なわれ、ドライバーにもすぐに連絡。必要とあれば、ドライバーが助けに行くことになる。いたずらしようとしなくても、道で突然こんなロボットに出くわしたら驚いてしまいそうだが、とりあえず実験段階ではトラブルは起きていないという。「得体の知れないものと遭遇すると、大抵は皆、近寄ったりはしないようです」とのことである……確かに。
ファイル 2017-02-01 19 06 33
 現状ではバン1台に最大10kgの荷物が入るキャリアを54個まで搭載できる。もちろん、不在時に荷物を宅配ボックスに入れて…というのは不可能。まあ、これはヒト型ロボットの時代にならないと難しいかも? というわけで、留守宅配送にならないよう、すべての荷物が送り先ユーザーと結びつけられ、指定された時間に配達されることになる。
 すでにアメリカでは電動走行ロボットによる配送の実証実験が始まっている。但し、日本の場合は住所表記が解りにくく、また集合住宅も多いだけに、普及は容易ではないだろう。ヨーロッパも然り。最初はアメリカが、やはり舞台になりそうだ。
 あるいは、すでにメルセデス・ベンツ、ボルボなどが実証実験を行なっているように、荷物の配送先としてクルマを活用するのも、もっと普及していくのだろう。これは配送業者のスマートフォンに送られる専用のコードによってクルマの荷室だけの解錠を可能とするというものである。
ファイル 2017-02-01 18 54 49
 この「Vans & Robots」のプロジェクトは、オンデマンド配達ロボットを手掛けるSTARSHIP社に、メルセデス・ベンツが声をかけてジョイントで始まったプロジェクト。今後は自動車メーカー単独ではなく、様々な分野で知見をもった異業種企業との水平志向でのコラボレーションが、こうして更に進んでいくに違いない。 
島下泰久