宅配の近未来はこうなる? メルセデス・ベンツ「Vision Van」
Amazonを筆頭にe-コマースが爆発的に普及したことで、近頃では宅配業者の多忙さが社会問題になるほどのレベルに達しつつある。単純に宅配件数が爆発的に増えたというだけでも十分なのに、それに比例して不在で再配達が必要になるケースも多くなっており、手間が何倍にもなっているのが現状。時間指定配達が、すでにかなり難しくなってきてもいる。しかも、e-コマースの市場規模は今後、更に拡大すると予想されているのだから、何かしらの対策が必要なのは明白だ。
メルセデス・ベンツ「Vision Van(ヴィジョン・バン)」は、電動化、電脳化が進む最新のクルマのトレンドを活用した、そんな現状に対するひとつの回答である。クルマ自体は、商用バンに最高出力75kWの電気モーターを搭載し、最長270kmを走行できるようにしたもので、ジョイスティックによって操作できること、車体の前後に搭載されたLEDには「停車中です」、「どうぞ追い越してください」といったメッセージを表示できること以外は、物凄く革新的というものではない。
画期的なのは、荷物配送のシステム。通常なら、配送車を該当地域に停車させた後、配送員が荷物を取り出し、各家庭を訪ね回るわけだが、ヴィジョン・バンではより広い範囲の地域を対象とするハブとなる場所に車両を停車させたあと、各家庭への配送をドローンによって行なうシステムを搭載するのだ。
荷物にはそれぞれICタグが付けられており、送り先のユーザーのスマートフォンとネットワークで結ばれている。指定された時間にドローンがスマートフォンと通信しながら荷物を配達するから、確実に指定された時間に荷物を届けることができるのである。
ドローンを使うメリットは、渋滞などの影響を受けずに済むこと。すべての荷物が送り先ユーザーと結びつけられ、確実に在宅している時を見計らって配達される。あるいは周辺に居れば送り先ユーザーに直接、届けられることになるのかもしれない。
e-コマースという観点からすれば、利便性が高まるのは間違いない。けれど、ベランダで待つユーザーのスマートフォン目掛けて、荷物を届けるためのドローンが飛んでいく……街の景色や様相、本当にそんな風に変わっていくのだろうか?
島下泰久 Yasuhisa Shimashita