ハイブリッド? 新種のEV? ノート e-POWER登場

ニッサン ノートのマイナーチェンジを機に新たに設定された「e-POWER」は、新開発の電動パワートレインを搭載している。その概要は、要するにシリーズハイブリッド。内燃エンジンと電気モーターを搭載しているが、内燃エンジンは車輪を直接駆動することはなく発電に専念し、この電力により電気モーターでの走行を行なう。
そのメリットは? まず走行が電気モーターだけで行なわれるため、フラットなトルクによる滑らかな加速が可能になることが大きい。更に、内燃エンジンをアクセル開度に関わらず常にもっとも効率の良い回転域で動作させることができるのも、大きなメリット。これは騒音、振動にも効いてくる。
一方で、ピュアEVに較べればエンジンが始動する分、静粛性は落ちるし、PHVのように外部充電もできない。もちろん、内燃エンジンを搭載しているからローカルでもゼロエミッションにはならない。この辺りが、他の電動化パワートレインとの違いということになる。
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実はこのノート e-POWER、すでにステアリングを握っているのだが、ドライビングはなかなか楽しいものに仕上がっている。まず前述のように、電気モーターの発進と同時に発生する254Nmというトルクのおかげで発進はとてもパワフル。バッテリーが満充電でもないと、電気モーターだけで走行できる距離は長くはないので、すぐにエンジンが始動してしまうが、アクセル開度に応じて回転数が上下するわけではないので、割りとすぐに耳が慣れてしまう。
通常は、この内燃エンジンは発電を行ない、その電気をバッテリーに蓄えている。しかしフル加速時には、このバッテリーからの電力に加えて、発電した電力も直接、電気モーターに駆動することで、鋭い加速を得ることが可能だ。
面白いのは、各種走行モードが用意されていることである。通常のDレンジでは、アクセルオンでスムーズな加速、アクセルオフで緩やかな回生ブレーキによる減速を得ることができる。ここでBレンジに入れると、回生ブレーキの効きが強まる。
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更にECOモードに入れれば、加速が緩やかになる一方、回生ブレーキの効きは強く。そしてSモードでは、加速もノーマルモードより力強くなる。この両モードでは、
アクセルペダルを戻すだけで、車両を停止させるだけの減速Gを発生させることができるから、ワンペダルドライブが可能だ。発進から加速、減速、停止に至るまで、すべてアクセルペダルで操作できる、まさにBMW i3と同様の新鮮な運転感覚が得られるわけである。
ノーマルモードは違和感を抱かないように、Sモード/ECOモードでは、こうしてワンペダルドライブを可能にと使い分けているのは、i3のようにトガッた人ばかりではないだろうユーザー層を考えてのこと。これは見識と言えるだろう。
注目の燃費は「e-POWER S」グレードで37.2km/Lを達成している。専用タイヤ、小型燃料タンクの採用などでカタログ燃費を狙った仕様とは言え、アクアの37.0km/Lを凌ぐ燃費は上々と言える。
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但し「電気自動車のまったく新しいカタチ」というコピーはどうだろう? 確かに駆動するのは電気モーターだけだが、充電する必要が無いのは他でもないガソリンを使って内燃エンジンで発電しているからであり、排ガスだって出す、シリーズハイブリッドが本当の姿である。ミスリードを招きかねない表現には、ちょっと賛成できない。そんなこと言わなくたって、十分な魅力と実力を備えた1台なのだから、正攻法でアピールしてほしいと思う。
島下泰久