自動運転技術を用いた新型セレナの「プロパイロット」、走りはどう?

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7月13日、日産は8月下旬に発売予定の新型セレナに、自動運転技術を用いた「プロパイロット」を搭載することを発表した。今回搭載されるものは、高速道路での巡航走行、並びに渋滞時に単一車線内でのアクセル、ブレーキ、ステアリングの制御を行なうことで、ドライバーの運転負担を軽減する。
実はこのプロパイロット、単眼カメラだけで高機能を実現したテクノロジーも大いに注目と言える。しかしながら、ここでは先日行なった試乗の印象から、まずはお伝えしたい。
システムは、ステアリングのスイッチを入れれば起動し、30〜100km/hまでの設定された速度での走行、前走車がいる場合には追従走行を行なう。この時には加減速だけでなくステアリングも操作される。但し、あくまで運転の責任を持つのはドライバーであり、手放し走行が許されているわけではない。ステアリングから手を離していると、まずは軽く警告。それでも操作が行なわれない場合、強い警告の後、システムは解除される。
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実際に試乗してみたところ、技術としてはかなりツカエるものになっているという印象を受けた。限られた状況下とは言え、加減速はドライバーに違和感を抱かせるものではないし、渋滞時などに前走車が停止するとそれに合わせて止まって、その状態を保持するのも運転をラクにすることは間違いない。
ステアリングの制御も滑らかで、且つ奥で回りこんだコーナーでも容易に前走車や車線を見失うことなく、少なくとも日産のテストコース上ではしっかり機能した。この時のステアリングの反力感は、わりと強めに出ている。エンジニアに聞いたところでは、車内でも議論があったが「今、クルマが操舵を行なっている」とドライバーに認識させることを優先したという。賢明な判断だ。
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詳細はまだ発表されていないが、日産では300万円以下の価格で、このプロパイロットを装備した仕様をラインナップする予定だという。大いに注目されることは間違いない。
「自動運転」を巡る議論が白熱化する中での発表だけに、余計に注目度が高まった感もあるが、試乗の際に話をうかがったエンジニアの方々、あるいは発表会で壇上に立った開発責任者などは、単なる「自動運転」という言葉を使わないよう、慎重に振る舞っているように見えた。また車両の側でも、前述の通りステアリングを握っていないと警告が出るし、現在システムがどのように動作しているかを、できるだけ解りやすくドライバーに伝えるためのインターフェイスには工夫が凝らされている。
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しかし一方で、『渋滞時のアクセル、ブレーキ、ステアリングすべての自動化』と資料に謳われていたり、あるいはコンファレンス内でも「単一車線内では自動運転が可能」という言葉が出てくるなど、詳しくないユーザーに対しては、誤解を招く可能性も感じられたのは事実だ。
セレナという大きなボリュームが見込める車種への採用だけに、コミュニケーションの方法、ユーザーへの周知、販売店スタッフへの教育等々を通じて、ユーザーに機能を正しく理解してもらうことを徹底してほしい。そう強く思う。夏休みシーズンのひどく渋滞した高速道路の状況などを考えると、正しい使い方をすればとても有用な技術。運転支援システムとしては、間違いなく絶大な効果を発揮してくれるに違いないのだから、今はまだ慎重過ぎるほど慎重に、大事に育てていきたいところである。
追記:こちらのリンクより試乗動画もご覧ください。
【動画】新型セレナの「プロパイロット」はこう走る
島下泰久