「現行ホンダ車で一番の出来!」 ホンダ クラリティ フューエルセル Part.1
ホンダ クラリティ フューエルセルに、やっと公道で乗ることができた。トヨタMIRAIで初めて街に出たのが2015年の4月だから、ちょうど1年遅れということになる。もっとも、ホンダとしては遅れたというつもりはなく、あくまでオンスケジュールだったとのこと。開発陣に聞くと、トヨタの動きの速さには驚き、さすがと感じたものの、焦らず良いクルマを出そうと開発してきたという。
そんなクラリティ フューエルセルの最大の特徴が、燃料電池スタックや駆動用モーターといった燃料電池システムの主要部分を、ほぼV型6気筒エンジン並みのサイズにまとめ、ボンネットフード下の空間にすべて収めたパッケージングだ。室内空間の犠牲が少なく、専用シャシーが要らないからコストも抑えられ、更には他のバリエーションへの展開だって見込めるのが、そのメリットである。
確かにその室内はとても広い。前席はシートも、また左右席との間隔もゆったりとしている。フラットなダッシュボードの形状、スイッチ類の数が減らされたスッキリとした意匠も相まって、開放感は抜群だ。また、3人掛けの後席も、大人3人で座ってすら余裕を感じさせる。特に足元の広さがありがたい。もっとも、それは全長4915mm×全幅1875mm×全高1480mmという立派な体躯に拠るところも大きいのは事実だ。
走らせてみれば、ホンダがきちんとしたクルマづくりをしてきたということが、更によく解る。まず鮮烈なのが、快適性の高さ。かっちりとしたボディを土台に、サスペンションは実に滑らかに動く。フラットな姿勢を保ちながらも、あらゆる入力を絶妙なダンピングでいなす、その乗り心地は上質という言葉がふさわしい。しかもフットワークも上々。鼻先軽く、軽やかに曲がっていくコーナリングは、良好な前後重量配分、そして重心の低さの恩恵である。
燃料電池パワートレインの走りは、すぐに最大のトルクを発揮できる電気モーターの特性で、発進加速は力強く、そして滑らか。但し、初速の勢いからすると、その先の盛り上がりには欠ける感もある。端的に言って、パワーがないなと感じられてしまうのだ。こうしたパワー感、加速感の演出は、もう少しやりようがあるように思う。
もう一点、改善してほしいのがロードノイズの大きさである。他の音が小さいせいもあるが、それにしたって耳障りだ。開発陣も認識はしているというのだが…。
細かい注文はあるが、しかし総じて完成度は高い。その味わいはちょっとした感動すら呼び起こすものとすら言えて、文句なしに、現行ホンダ車で一番と評したい。
では、ホンダで一番だとしたら、ヨソとの比較では? そちらはPart.2で触れることにしよう。
島下泰久