舞台を選ばずここまで走るとは! ジャガー「I-PACE」を試す Part.2

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 未来的、特徴的な外観デザインに負けず劣らず先進的な雰囲気を醸し出しているのが、ジャガーI-PACEのインテリアだ。メーターは大画面のディスプレイ内に収められ、ナビゲーションやオーディオ、空調などを操作するインフォテインメントシステムは大型タッチスクリーンに表示される。ジャガーらしいドライバーオリエンテッドのデザインは、高いクオリティも相まって上々の居心地を提供してくれる。
 好感触なのは、すべての機能を画面から呼び出すようにせず、小気味良いタッチのハードスイッチにも振り分けているおかげでもある。何でも階層の下に収めるのではなく、直感的に手を伸ばして操作できた方がいい機能もあるのだ。

 室内空間の広さは、驚きのポイントと言えるだろう。前席左右間には10ℓもの容量を誇るセンターストレージが用意されているし、キャビンフォワードのフォルムを活かしてフロントシートが前に寄せられた恩恵で、後席レッグルームはXJのロングボディと同等の余裕を実現している。ラゲッジスペースは後席使用時で656ℓ、最大で1453ℓ。全長はほぼXEと同等と考えれば、期待をはるかに超える広さ、容量だと言っていい。しかもフロントのフード下にも27ℓのスペースが確保されているのである。
 さて、では肝心の走りはどんな仕上がりだろうか。高めの着座位置をもつシートに乗り込んでクルマを発進させると、加速の立ち上がりは電気モーターならではの素早さで、AWDということもありホイールスピンさせることもなく速度が乗る。その軽快感は重量を忘れさせるほどだ。しかも単にフラットに大トルクが供給され続けるのではなく、高速域では確かな伸び感も味わわせてくれるから、決して無味乾燥ということは無い。

 それでも物足りないと考える人のためにか、室内にエンジン音的なサウンドを響かせるアクティブサウンドデザイン機能も備わる。V8サウンド的なものが響くのは、まあ面白いので決して悪くはないが、きっと多くの人が何度か試したあと、オフにするんじゃないだろうか。
 アクセルペダルから足を離した時には回生ブレーキが働く。その効きは2段階に調整でき、ハイに設定しておけば、最大0.4Gの減速Gが発生し、ほぼブレーキペダル要らずのドライビングができる。この感覚はEVならではのものだ。但し、停止寸前のコントロール性は現状ではまだ今イチ。ブレーキペダルを踏む場合でも、それは変わらない。またクリープもオン・オフの設定が可能だ。
 それより何より鮮烈なのがハンドリングだ。Fタイプ譲りのフロントダブルウィッシュボーンに、リアをF-PACE由来のインテグラルリンク式としたサスペンションにエアスプリングの組み合わせは、常に4輪が路面を離すことのない安定性と、優れた操舵応答性を実現している。最大22インチという大径タイヤを履くにも関わらず、乗り心地も上々と言っていい。
 低い重心、優れた前後重量配分も、それらを後押ししているのは間違いない。一般道にワインディングロード、更にはサーキット走行まで含まれていた今回の試乗プログラムは、最初に述べた通りジャガーの自信のほどを示していると言っていい。あるいは彼らにとっては、いつも通り当たり前のことをしただけなのかもしれないが。

 ちなみにサーキット走行での直線スピードは、ジャガーFタイプの2ℓターボ版とほぼ同等だった。コーナリングはもちろん速さでは叶わないもののコントロールの容易さは上回るほど。重心の高さを意識させられることもなく、大いに楽しめた。
 しかもI-PACEは、オフロード走行でも非凡なところを見せる。高速域では10mm下がる車高が、オフロードモードでは50mm上がり、優れたトラクション、精密なコントロール性なども相まって、ぬかるんだ山道でも至極安心して走りを楽しめた。500mmという渡河深度も目を見張るところだ。何しろ高電圧バッテリーを山ほど搭載しているだけに河の中に入っていくのは勇気が要ったが、もちろん難なく走り抜けることができたのである。


今回は車両を乗り換えつつ、またこのようにオフロードまで含めた環境で乗っていたので正確な燃費データは無いのだが、燃費計を見ていた印象としては、想像以上にバッテリーが保つ、あるいは減らないという感触だった。480kmという数値は、それこそモデルSなどより見劣りするように思えるかもしれないが、こちらはWLTPモードでのデータだけに、おそらくI-PACEは“期待よりも長い距離を走れるEV”ではないかと思う。
 I-PACEは見た目も走りも、ジャガーらしさとEVならではの旨味が非常によくブレンドされて、魅力的なプロダクトとして結実している。特にデザインなどは、もしかしたらユーザーの先を行きすぎているかもしれないが、それも含めてブランドの先見性、先進感を象徴する存在となるのは間違いない。日本での発表は年末ギリギリ辺りの予定だ。

島下泰久