世界初の水素自動車MIRAIに乗る Vol.2

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スタートボタンでシステムを起動させたら、セレクターレバーを「D」に入れ、ここだけはちょっと古臭い足踏み式のパーキングブレーキを解除。アクセルペダルを徐々に踏み込んでいくと、MIRAIはスッと軽快に走り出す。加速は至極スムーズ。右足の動きに即応して豊かなトルクがもたらされ、まるで抵抗感無く速度が上がっていく。その間、室内は常に静粛に保たれたままだ。

この感覚は、要するに良く出来たEVである。それはそうだ。電気をバッテリーから供給するのではなく、燃料電池によってつくり出しているという違いこそあるが、その電気によってモーターを駆動しているのはEVと同じ。感覚には、違いが出る余地はないのである。

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335Nmという最大トルクはともかく、154psの最高出力は体躯の大きさを考えれば、物足りなく映る。しかしながら電気モーターの特性で立ち上がりが鋭く、その後もシームレスにトルクがもたらされるので、実用上は十分な速さがある。アクセルを全開近くまで踏み込んだ時に、もう一段のキックがあれば尚良いが、最初の1台にそこまで望むのは、まあ贅沢というものだろう。

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それにしても、どうだこのシャシーの出来映えは。ボディは剛性感に満ち満ちていて、それを土台にサスペンションがしなやかに動く。ステアリングの手応えも悪くなく、フットワークはとても上質に躾けられている。雨で濡れた路面の継ぎ目を越える時に、一瞬接地感が薄まるのだけは気になったが、総じて見れば現在のトヨタ ブランドのクルマの中ではベストのフットワークを実現していると言っていい。リアサスペンションなんて単なるトーションビームなのに…。

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重心の低さ、前後バランス、そしてボディ剛性という基本的な素性に、きめ細かなチューニング。すべてが結実した走りである。

エコカーだからってユーザーの期待の更に上を行くものでなければ意味がない、という号令の下、徹底的に煮詰めたというこの走りだが、実は昨年10月、そして今年2月にテストしたプロトタイプとは、ちょっと印象が違っていた。乗り心地が更に滑らかに、ソフトに変わっていたのだ。

この点を開発陣に聞くと、まず最初に納車がはじまった官公庁のユーザーからの意見をもとに改良が施されたのだという。車体後端部のボディ剛性を高め、構造用接着剤もリア周辺、そして前後ホイールアーチ内側などに使用範囲を拡大。それに合わせてサスペンションは前後のスプリングを柔らかめに変更するなど、細かく手が入れられているのだ。

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大抵の場合、新車の開発期間としては、デビュー後3ヶ月辺りまでが考慮されている。市場に出した直後辺りまでの不具合は、ここで吸収するわけだ。しかしMIRAIに関しては、6ヶ月までの期間がこれに充てられているという。主に官公庁や関連企業のユーザーの手に渡るこの期間に、不具合や不満の洗い出しを行ない、一般ユーザーへのデリバリーが始まる頃には、より完成度の高いクルマに仕上げられるようにと、最初から考えられていたのだ。実際、官公庁筋からは当初、乗り心地について、そしてトランクフードの閉まり音についての不満の声があがったという。今回乗ったクルマは、実際にその声に応えていたわけである。

Vol.3に続く

写真:サステナ編集部