富士の裾野のFANUC本社で最先端のロボット技術に触れた

 カリフォルニア州フリーモントにあるテスラモータース本社工場を訪ねて(テスラ本社ファクトリー訪問 Part.1 〜最先端のロボットの仕事を見学する〜)驚いたことのひとつが、ロボットの活躍ぶりだった。しかも、その多くが我らがファナック社製だったから、誇らしい気持ちになったのは本当だ。
 そのファナック、コンシューマー向けの製品を出しているわけではないから、名前は知っていても、どんな会社なのかよく知らないという人も、きっと少なくないのではないかと思う。山梨県忍野村に本社を構えるファナック株式会社は創業以来、工場の自動化を追求してきた会社。FA(ファクトリー・オートメーション)事業、ロボット事業、ロボマシン事業で世界の最先端を行く。特に、産業用ロボットでは世界四傑のひとつとして数えられており、世界の多くの自動車メーカーの工場で活用されている。テスラ車のボディの高い精度を支えているのは、まさにこのファナック製のロボット達だと言っていいだろう。

 そんなファナックの本社工場は、富士山の麓の広さ51万坪にもなる敷地にある。何しろ広大であり、また地元への貢献度も大きいということだろう。富士五湖道路の山中湖ICを降りると「ファナック通り」と名付けられた通りがあり、そこをしばらく行った先に入り口がある。
 ちなみにファナックの工場はここの他に筑波、隼人、そして昨年より稼働をはじめた壬生と、すべて日本にある。サービス拠点は世界中にあるが、生産はすべて、国内で行なわれているのだ。

 ファナックのロボットの一番の特徴は、すべて電気モーターで動作することである。そもそもサーボ機構の開発に成功したことがロボット事業へのきっかけとなったからこそだが、それに圧倒的なメリットがあったからこそ、ファナックはここまで成長することができたと言っていいだろう。
 油圧動作のロボットとの決定的な差は、温度変化などの動作への微妙な影響が避けられることにある。これが、高い位置決め精度が求められ、しかも同じ動作を繰り返す自動車の大量生産のニーズにぴたりと符合して、世界中の自動車工場のオートメーション化が進むにつれて、販売を大いに伸長させることとなったのだ。
 自動車業界との関係が始まったのは塗装ロボットから。1982年にはGMとの合弁会社、GMファナックロボティックス社を設立。この会社は現在ではアメリカ最大のロボット会社、ファナックロボティクスとなっている。塗料の無駄なくムラなくボディを塗装する繊細な技術は、世界中の自動車工場で重宝されている。

 そう、ロボットの仕事の範囲は非常に広く、部品を持ち上げて運ぶ、固定する、溶接する、塗装する……と、様々な範囲に及ぶ。今回見せていただいたデモ機も、コンロッドのような部品を拾い上げて加工機械に運び入れ、加工されて出来上がってきたパーツを選別するものや、ウインドウ周縁にシール材を丁寧に塗布するなどの細かい作業を行なうものから、自動車のサイドパネルのような大きなパーツを移動させ、精確な位置にセットしたり、更には自動車そのものを持ち上げたりといった大きなものまで揃っていた。動作はどれも機敏で正確。スッとレスポンス良く動き出し、所定の位置でピタッと停止するのを、幾度も幾度も繰り返す様は、何度も見ていても尚、見事と唸らされてしまった。

 このレスポンスの良さが活かされた新しいロボットが、協働ロボットだ。従来、ロボットはその力強さゆえに人間との接触による事故を避けるため、柵などで囲った中でしか動作させられなかった。ところが、協働ロボットは表面をカバーで覆っているだけでなく、人などに触れると瞬時に停止することを可能としている。また、人の手で向きを変えたりも自由にできるようになっており、人間と共存させることができるのである。
 この協働ロボットによって、重いパーツを持ち上げて、運んでくるのはロボットに任せ、人がそれを受け取ってクルマに積み込むようなことも可能になった。実はすでに某国内メーカーの工場で、このロボットが活用されていたのを確認している。人とロボットの新しい関係が生まれつつあると言ってもいいのかもしれない。
 自動車ビジネスはますますその規模を拡大させており、また自動化への要求もどんどん高まっている。ファナックが自動車産業で活躍する場面は、今後ますます増えていくことは間違いない。そんな会社が日本にあること、誇らしく嬉しく思ったのだった。

島下泰久