レクサスLC500h試乗! マルチステージハイブリッドの乗り味は?

すでに国内でもテスト車が頻繁に目撃されているレクサスの新しいフラッグシップクーペ、LC500/LC500hの最終プロトタイプのステアリングを遂に握ることができた。舞台はスペインはセビージャ。一般道とテストラックとして知られるモンテブランコサーキットが、その舞台だ。

V型8気筒5ℓ自然吸気エンジン+10速ATを搭載するLC500と、V型6気筒3.5ℓエンジンに2基の電気モーター、更に4段ギアボックスを組み合わせることで、仮想10段の変速を実現したマルチステージハイブリッド・システムを搭載したLC500hの、2モデルが展開される、このレクサスLC。サステナが注目したのは、当然後者のLC500hである。

マルチステージハイブリッドの詳細なシステムについては、こちらの記事にて、すでにお伝えした通りだ。

レクサスLC500hの「マルチステージハイブリッド」って? Part.1
レクサスLC500hの「マルチステージハイブリッド」って? Part.2

狙いは、従来のTHS2の弱点だったドライバーの意思とエンジンの回転上昇、パワーと加速がリンクせず、走る歓びが欠けているという部分を、徹底的に排除すること。ハイブリッドの燃費が良いのは当然で、その上で上質なドライバビリティを確保することが主眼に置かれている。スペックはエンジンが最高出力299ps、最大トルク348Nm、電気モーターが同179ps、300Nmで、組み合わせたシステム最高出力は359ps。最高速は250km/h、0-60mph加速は4.7秒と発表されている。

2017_lexus_lc500h_exteriordet_07

では実際の走りは? まず一般道、それもノーマルモードでの走りは至ってジェントルだ。発進は電気モーターで。その後、必要になるとエンジンが始動するが、従来のレクサス・ハイブリッドと違うのは、電気モーター走行の時間と距離が長いことだ。またエンジンがかかった後も、加速感は従来のようにモターッとはしておらず、まさに10段AT搭載車のようにエンジン回転が鋭く上昇し、シフトアップしてはまた回転上昇が始まるのを、状況が許すならば10速まで繰り返していく。
エンジン、エグゾーストはいい音を響かせているし、エンジンのレブリミットが従来の6000rpmから6600rpmまで引き上げられたことで、伸び感も一層心地よくなっている。このフィーリング、悪くないのだ。

厳密に言うと、アクセルオフすればすぐにエンジンが停止するなど、バックグラウンドでは効率性を最優先に制御が行なわれており、すべてがダイレクト、リニアなわけではない。変速も滑らかだが、言ってみれば滑らか過ぎる感もある。マグネシウム製とされたステアリングシフトパドルを使っての変速も、いつも意のまま、ナチュラルなわけではない、とも言える。あくまで“仮想”10速だから。

2017_lexus_lc500h_interiordet_3

しかしながら従来のレクサス・ハイブリッドに較べれば、一体感も気持ちよさも格段に上回るのは事実で、単純に走っていて楽しい。滑らか過ぎるというのは少なくとも一般道では難癖で、その上質感がクルージング時にはぴったり来る。

LCを語るならばシャシーについても触れないわけにはいかない。レクサスの新しいFRプラットフォームであるGA-L(Global Architecture-Luxury)は、ロングホイールベース化とショートオーバーハング化によりフロントミッドシップレイアウトを実現し、しかもエンジン搭載位置、重心高、ドライバー着座位置もグンと下げられている。サスペンションは、前後マルチリンク。電子制御ダンパーが備わる。

lexus_lc_d1_087

まず感心するのはボディの剛性感がきわめて高いこと。そして、それを土台にサスペンションがきれいに動いていることだ。20インチもしくは21インチのタイヤは全車ランフラットだが、少なくとも21インチのミシュランではそのネガはほとんど意識せずに済み、上々の乗り心地を味わえる。

ステアリングフィールも上質で、切り込んでいくとクルマ全体がリニアに向きを変えていく。ボディの横曲げ剛性、リアサスペンションの横剛性も相当高いようで、その先の一体感はかなりのもの。コーナリング後半でアクセルを入れていった時の蹴り出し感、トラクションも良く、非常にコントローラブルなのが印象的だった。
但し、LDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリング)と呼ばれる4輪操舵機能付きになると、操舵初期のステアリングフィールにほんのわずかに甘さがある。それ以後は、いわゆる4WS特有の違和感はまったく無いのだが、現時点ではLDHは無しでいいかなというのが筆者の実感だ。
 
2017_lexus_lc500h_dynamic_16

他のどのクルマにも似ていない、実に美しいスタイリングをもつレクサスLCは、その走りもこれまでのレクサスをはるかに凌駕する、新しい次元の質の高さを実感させてくれる。正直に言えば、サーキットのような舞台で、LC500の贅沢なV型8気筒5ℓ自然吸気エンジンと、スパッと歯切れ良い変速感が気持ち良いダイレクトシフト10速ATの組み合わせの快感を知ってしまうと、心は揺れる。左脳はLC500hだと思いつつ、右脳がLC500を求めてしまうのは否定できない。

けれども、このスタイリング、この存在感である。どう乗るべきかと言ったら、そりゃ時にはワインディングロードやサーキットを攻めるのもいいが、基本はジェントルに、優雅に行くべきだ。更には、時代感もある。そうしたところをトータルで見れば、結局自分ならLC500hを選ぶだろう。レクサスとしても、北米市場を考えればV型8気筒はマストとは言え、心根ではLC500hにこそ本質があると見ているのでは、というのが開発陣との話の中で得た感触である。

img_0058_1

レクサスLCの日本での発売は2017年春頃になる予定だ。価格は明らかにされていないが「ライバルとして想定したのは、北米で高い人気を誇るBMW6シリーズ」とのことだから、1300〜1500万円辺りからと考えておけばいいのではないかと思う。 

島下泰久