クルマに乗って健康になる? レクサス「Kinetic Seat Concept」

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コンセプトカー「UXコンセプト」が主役としてフィーチャーされていたパリ国際自動車ショーのレクサス ブースにもう一点、とても興味をひく展示があった。「Kinetic Seat Concept」と呼ばれるシート単体だ。

このシートの特徴は大きくふたつある。まずひとつ目は、見ての通りのネット状のシートクッション。これは、石油由来ではない人工クモ糸繊維なるものを用いてつくられており、通気性の向上、荷重の分散による疲労の少なさ、そしてフレーム構造と合わせた軽量化など様々なメリットがある。

そしてもうひとつ、実はこちらこそハイライトと言うべきなだろう。このシートは構造体が可動式となっている。座面、そして背面が乗員の腰の動きに呼応して左右に振れるように動くようになっているのだ。

たとえば通常、右に旋回する時には身体は左側面がシートに押し付けらる。そして、身体の動きがここで制限された分、首は更に外側に持っていかれようとするかたちになる。

それに対して「Kinetic Seat Concept」では、右旋回の際には横Gに対して乗員の腰が左方向に動き、シート座面と背面がそれに追従する。まさに、歩いている時の人間の腰のような状態である。

こうして腰をひねるかたちにすると、身体の軸を横Gに対して最適に保つことが可能となり、首の動きを抑えられり・それが目線のブレを減少させ、疲労の大幅な低下に繋げるのだ。また、腰が適度に左右に動いて刺激となることも、やはり筋肉疲労の低下に貢献するという。

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このシート、単なるアイディアではなく真剣に研究されている。レーシングカーに装着してのテストでは疲労の減少、そして操作の確実性に於いて明らかにポジティヴな結果が出ているというし、血流など身体の健康度も高まるというデータも出ている。

但し、本当に誰にとっても運転のプラスの効果があるのかは、まだ検証の段階だ。コーナリング中に身体の軸が動くことが、コーナリングやブレーキの操作を繊細に行なえるように仕向けるのか、それとも人によってはしっくり来ないと感じさせるのかなど、確かに興味深い要素はいくつもある。シートのサイズについても、同じシートであらゆる体型の人をカバーし、必ず好結果に繋がるかは、

それにしても、もしこのシートの効能が現実のものとなれば、ドライバーの疲労が減り、コーナリングが軽快になる可能性が高いのだから、やはり注目しないわけにはいかない。更には、同乗者の車酔いを減らす効果も期待しているという。目線がぶれないこと。これが車酔いを抑えるための大きなポイントなのだ。

いやいや、同乗者に限った話ではない。自動運転の時代になって、ドライバーがステアリングを握らなくなったら、予期せぬ動きに常にさらされる乗員すべての快適性を確保するためには、現状とは異なる考え方が必要になってくるという可能性は十分にある。本当の意味で快適な自動運転車による移動のためには、この技術、大きなカギを握るかもしれないのである。

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このアイディアは、ジョギングやスキーなどのような体全体の動きが車内でも再現できないかという発想が発端だったという。すごいことを考える人が居るものだし、それを研究対象とし、ましてや具体的なモノとしてかたちにして、ショーに展示したのだから、かつてのトヨタらしくはない。聞けばレクサスのプレジデントも技術のトップも、こうしたことには凄まじく積極的、イケイケなのだそうで、なるほど最近のトヨタは、やはりじわじわと面白い会社に変貌しつつあるようだ。

島下泰久