トヨタとの深い関係……BMWが燃料電池車の将来戦略を明らかに。

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BMWは9月26日、東京お台場のBMW GROUP Tokyo Bayにて、燃料電池車(FCV)に関するプレゼンテーションを行なった。9月24日、25日、各国の自動車に関する最新技術の開発・普及をテーマとする「G7長野県・軽井沢交通大臣会合」への臨席のため、BMWドイツ本社より来日中のBMWグループ リサーチ 新技術研究本部パワーとレーン研究部門執行役員、マティアス・クリーツ(Matthias Klietz)氏。が、日本の報道陣にも時間を割いてくれたかたちである。

ご存知の通り、BMWは燃料電池自動車の開発に関してトヨタと提携関係を結んでおり、2020年の市販を目指して開発している真っ最中だ。今回、会場に展示されていた5シリーズGTをベースとするテスト車両、そしてi8の進化版と呼びたくなるテスト車両などが、すでに公開されているが、クリーツ氏によれば「技術的には、いつでも市販できる状況にある」という。

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問題は、まずコスト。車両はもちろん、水素自体のコストも下がらなければ普及に繋がらないからだ。もちろんインフラの整備も重要。ドイツでは政府主導のH2Mobility社により2018年に140箇所、2023年には計400箇所の水素ステーションが整備されるロードマップが描かれている。これは燃料電池車の普及予測に照らし合わせれば、1ステーションあたり300台に相当する。

更に言えば、BMWが、というかドイツという国が重要視しているのは、水素を何から、どのように作るかということだ。彼らが水素の活用を考えるのは、供給が不安定な再生可能エネルギーのバッファ、そしてストレージとして水素が非常に有効だと考えているから。すでに全エネルギー中の再生エネルギーの割合が30%に達しているドイツは、2030年にはそれを55%に、そして2050年には80%に引き上げる計画だ。それらを有効活用するには、水素がベストな解であることは間違いない。貯蔵が容易で、可搬性も高い。更に、自動車用の燃料ということに限って話すならば、充填時間が短くて済むこと、既存のガソリンスタンドのインフラを有効活用できるということなど、そのメリットは甚大だ。

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ドイツでは、エネルギーとしての水素はこのように再生可能エネルギーから作り出すことを前提としている。日本のように天然ガスからの改質で作るようなことはしない。これは、エネルギー政策と環境政策のバランスの問題である。あくまで念頭にあるのはカーボンフリー。そうしたシステムが構築できてこその、水素使用の拡大と、彼らは考えている。

実際、ドイツ国内ではすでに30の生産設備、つまりは再生可能エネルギーにより発電し、それを電気分解により水素に転換する設備が稼働中である。そして2022年には、25万台の燃料電池車をカバーできるだけの生産量確保を目指すという。

そんな燃料電池のBMWは、一体どんなクルマになるのだろうか。i3のような電気自動車とは、何が異なってくるのか。クリーツ氏は言う。

「BMWの燃料電池自動車が念頭に置いているのは、航続距離は500km以上、BMWらしいドライビングダイナミクスと俊敏性を備え、魅力あるデザインと革新的なドライブトレインを持ち、電気自動車並みのコストで走行できるということです。お客様の要望は、生産過程もゼロエミッションであること、他車と同じようなエキサイティングなデザイン、サイズや荷室の容量、快適性や運動性能を有し、走行可能な距離と充填時間は今のクルマと同じ。そして、価格は1割の上昇までは容認するというものでした。」

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すでにBMW iシリーズを展開しているBMWは、EVとFCVは共存できると考えている。EVは短中距離用で小型車メイン、FCVが長距離用で大型車メインという棲み分けだ。BMW iは新たなモビリティの提案。対して、BMWの現ラインナップと親和性が高いのが、FCVの方であることは間違いない。

燃料電池技術の基本部分、つまりFCスタック、高圧水素タンクといった部分は、すべてトヨタとの共同開発になる。実質的には、トヨタ主導と言ってもいいだろう。興味深いのは、BMWが後輪駆動を採用していること。高圧水素タンクはセンタートンネル内に配置され、室内スペースや荷室を侵食していない。おそらく、トヨタの次の燃料電池自動車は、これとほぼ共通の内容を持つはず。それはクラウン、あるいはレクサスLSになるのだろうか。

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尚、トヨタとの協業分野は車両本体に留まらず、インフラ整備、共通化の推進、認証に関する各国担当官庁との折衝等々、多岐にわたるという。

まだまだ2020年までは時間があるだけに、詳細が解ったわけではないが、しかし輪郭が徐々に見えてきた感はあるBMWの燃料電池自動車。水素の生成プロセスにまでコミットして、万全の舞台装置を構築した上で登場するとなれば、2020年まで待たされるのも仕方が無いところか……。説得力ある言葉に、ついそう思えてしまったのだった。

島下泰久